【vol.46】いつもより距離が近くなる キャンドルナイト

F46 Mori Main

やっと雨風が凌げるようになった小屋にシンクもできた。蛇口をひねると水が出る。都市では当たり前のことでも山の中のツリーハウスでは特別なことなのだ。ベッドで眠る贅沢な夜に笑い声がプラスされる。子供の頃夢に描いた冒険の秘密基地で、かつての子供と5歳の弱虫が夜を過ごす。
写真・文/荒井裕介

森暮らしが快適な暮らしに変わる

ようやく雨風が凌げるようになりツリーハウスでの暮らしが始まった。問題点は、水が自由に使えず不便だったことだ。もともとそこはプランに入れていたのでキッチンスペースに水道とシンクを作る。雪の多いこの森は冬に外で水を使うのは難しい。かといってポンプを回す電力はない。それは最初から分かっていた。タンクを設置して必要最低限18L程度の水を確保できればいい。自重落下式の水道を作るのだ。と意気込んで始めたものの厚さ3㎝ほどの無垢の板を引き回しノコギリで切り抜くのがこんなに大変な作業だと知ったのは作業中盤だった。苦労の甲斐あってできあがったシンクに満足した。シンクは給食用アルミボウルに排水ドレンをつけただけだが、なんだか可愛い。

そんな作業をしながら前回作った窓の取っ手を作った。水が出るようになると娘が蛇口をひねり水を出し、窓に取っ手が付けば開け閉めを繰り返す。現場監督が検査を行っているようだった。夜ベッドに座り2人で話しているといつもより距離が近くずっと寄り添っていることに気がついた。焚火でもそうだが必要最低限の明かりで過ごすと家族の距離が近くなる。寄り添う灯りができるのだ。夜空を見上げたり、キャンドルの灯りを眺めたり。普段忘れかけていた距離の大切さを感じた。下界から遠い森の家は娘との距離を縮める場所になった。これから僕の森暮らしが本格的に始まる。

F46 Mori1

限られた道具で板を切り抜く

シンクを作るために用意した厚さ30mmの無垢の板をハンドドリルと引き回しノコギリで切り抜いていく。円を描く道具は麻ヒモと釘、鉛筆だけだ。これだけあれば立派なシンクが作れる。

森に棲むならアウトドアマンの夢を実現したい!?
ツリーハウスを作る[その5]

ツリーハウスは3mの樹上。水を使うのは一苦労だ。だったらシンクを上に作ってやると思いキッチンスペースも用意した。ジグソーなんてない時代はこうやって手作業で分厚い板を切り抜き、担ぎ上げたのだ。でも正直かなりシンドイ作業だった。

水回りを作る

F46 Mori2

中心に釘を打ち、そこを基準に持参したアルミボウルが収まる円を描く。麻ヒモを釘に結び鉛筆を留めれば簡易コンパスのできあがりだ。円の内側にドリルで穴をあけ、引き回しノコギリという曲線用のノコギリで切り抜いていく。

F46 Mori3

キッチンの上部に棚を作りポリタンクを設置。ホースと塩ビパイプで蛇口をつなぎ自重落下式の水道を作った。蛇口をひねると勢いよく水が出る。一人でニヤついた。

取手を付ける

F46 Mori4

小屋を作る際に切ったツツジの枝を保管し、形状の良いものをドアノブや窓のハンドルにした。握りやすく僕的には気に入っているポイントだ。山小屋の雰囲気も増す。

F46 Mori5

窓を開けやたらとヤッホーと叫ぶ娘。作業中もツリーハウスでシルバニアファミリーのような世界に喜んでいた。

ベッドを作る

F46 Mori6

角材と広めのパレットの板で作ったベッドには、寝心地を良くするために市販のシングルマットレスを入れた。ブランケットとピローを入れて快適な寝床になった。ここで不自由なく生活ができるのではと思えるほど心地がいい。

雨樋を作る

F46 Mori7

なぜこの板? と思う人がいるだろう。実はこれは屋根に入れる断熱材を押さえるためだ。その断熱材とは土だ。この屋根はグリーンルーフになる。雨で土が流れないようにタールを塗った板で屋根を囲む必要があるのだ。

ブッシュクラフター 荒井裕介

都市暮らしにいまだ馴染めない41歳。YouTubeチャンネルを開設してYouTuberデビュー。“荒井裕介Youtube”で検索してね。最近ますます職業が不明になっていることも気にならなくなりました。