【vol.29】炭焼き再考 ー実生活にも効果アリ!等身大のエネルギーを取り戻すー

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唯一無二のエネルギーだと騙され“オール電化”で痛い目を見るより、今一度、過去の人類を支えた等身大エネルギーに着目したい。「炭」は決して主力とはならない。だが、捨てるべきものでもない。

写真・降旗俊明

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広若剛

「LEARN FOR PEACE」と書かれたTシャツ、バックパックにはチェ・ゲバラのバッチ、全体的に古き良きプロレタリア然とした出で立ちで現れた広若氏は、東京で「多摩炭やきの会」を束ねる炭焼き達人。今回は我々にもできる最も基本的な伏せ焼きを伝授してくれた。

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木村直

今回は助っ人として広若氏と同じ「多摩炭やきの会」に属する木村氏も参加してくれた。燻製料理に造詣が深く、過去のエネルギー「炭」の魅力を熟知している。

食料をコントロールする者が人々を支配し、エネルギーをコントロールする者が国家を支配し、マネーを支配する者が世界を支配する。これは冷戦期のアメリカを担った冷徹な策士、キッシンジャーの言葉である。当然現代の主なエネルギーは電力なので、今我々から騙し取った権力を振るって国家を支配しているのは、蜜月な関係にあるあの政党とあの広告代理店とあの電力会社である。

というわけで、それに少しでも反抗したいサバイバル愛好家にオススメの原始遊戯が「炭焼き」である。これは今や過去のエネルギーとなってしまった「炭」を作り出すためのテクニックだが、その材料をとっても設備をとっても、個人の力の範囲内で優良なエネルギー源を生み出せるのが何よりの魅力だ。これを知っておけばライフラインが断たれた未曾有の事態にあってさえ比較的効率の良いエネルギーを生成できるほか、失敗しても消し炭ができるだけで臨界事故は起こらない。もはや現代社会において電力の恩恵を否定することはできないが、生活のサブシステムとして炭の有用性に着目したい。

さて、ここでは炭の作り方を紹介するが、今一度その実用性を確認したい。近縁の薪と比較すると、炭は炎や煙を上げず、種火が消えずに長時間燃焼し、火力が安定していて空気量により温度調節も容易である。また、木炭内部の微細な孔隙による吸着性やそれに住み着く微生物の分解作用で、匂いや水、土壌の有害物質を取り除く効果がある。脱臭剤や浄水器に必要な経費を考えれば、炭には生活を豊かにする即効性もある。


 

里山散策で目にするあの穴も炭焼き場

里山を散策していると突然現れる穴。その多くは側面に石垣が組まれていて、明らかに人工物だということがわかる。何を隠そう、これこそが高度成長期までの日本を支えたエネルギー製造場所“炭焼き場”跡である。当時は窯が建てられていたわけだが、雨風により天井部が落ちて穴だけ残ったというわけだ。

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炭は日本の家庭を支えるエネルギーだったので「どこの里山にもある」というくらい炭焼き場跡は身近だ。本来は左写真のような窯が山中に作られていた。

最も基本的な炭の作り方

今回は炭窯がなくても誰でも挑戦できる原始的な炭焼き・伏せ焼きの方法を教わった。土を掘って作る窯を本来のものより小さくすれば、短時間で簡単に炭を完成させることができる。

1 炭を焼くための 穴を掘る

本来は縦2m×横1m×深さ30cmほどだが、今回は短時間でできるように穴を小さくした。窯口の位置は、沢から吹き上がる風が自然に窯口から入るように調整する。空気の周りを均一にするために直角垂直に掘り、窯口の手前は風が入りやすいように少し勾配をつける。

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穴のサイズは使用する薪の大きさに合わせた。縦80cm×横50cm×深さ30cmほど。掘った土は後で上から被せるので横に盛っておく。

2 煙突を設置する

穴を掘り終わったら煙が抜ける煙突を取り付ける。ホームセンターで売っている高さ1mほどのステンレスの煙突を2本用意して、できるだけ対称になる位置に設置する。煙突は少し斜めに立てると倒れにくく、空気の抜けも良い。煙突は節を抜いた竹でも代用できる。

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土が崩れて煙突の穴を塞がないように、レンガなどで底面との空間を作って空気が抜けるようにする。

3 炭材を置く土台を作る

土の湿気の影響を直接受けないように、また空気が回りやすいように、底部に炭材を置く土台を作る。竹や木材などを2本使い、レールのように平行に置く。この時、レールにする木は左右同じ高さのものを使うと良い。

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窯口から空気が入るように、口を塞がないように置く。レールの高さは煙突の下部よりも少し高くなるように調整する。

4 薪を詰める

炭材を隙間なく敷き詰めていく。この時、煙突から奥側とサイド部分に緩衝材となる素材を隙間なく敷き詰める。土の水分の影響で温度が上がりにくくなることを防ぐためだ。この時は乾燥した竹を使用したが、石や乾いた杉っぱなどを詰めるのがベスト。

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上に火を付けるので、燃えやすいものから下に並べていく。今回は杉と楢を用意したので、燃えやすい杉は下に、楢は上に並べた。

5 炭化に必要な熱を確保する

炭材を並べ終わったら、炭化に必要な熱を発生させるために、炭材の上で焚き火を熾す。この時、炭材を燃焼させると消し炭になってしまうので、炭材自体に火をつける訳ではなく、焚き火用の木を用意して焚き火をする。火が炭材に燃え移らないように注意。

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炭材にすぐに火が燃え移りにくいように炭材の上には乾燥した竹を並べて、その上で焚き火をした。

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6 熾きになったらダンボールと土を被せる

焚き火が熾きになって炭材に火が燃え移りそうになった頃が、熱を十分に確保できるタイミング。それを見計らって熾きの上から乾いたダンボールを、その上に水で濡らしたダンボールをかぶせて、さらにその上から土をしっかりかぶせて燃焼を進めないよう空気を遮断する。

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7 熱を確保するために燃焼部分を維持する

炭材の燃焼は避けつつ熱を確保するため、火種ごと消えてしまわない様に窯口からうちわで扇いで空気を入れて、燃焼する部分は残しておく。扇いで窯内の熱が上がったら、通気口のみを残して窯口を塞ぐ。空気の入り口が狭まり、扇いだ時だけ空気が入るので、熱のコントロールが楽になる。

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あおがなくても濃い煙が出るようになったらレンガや石などで窯口を塞ぐ。この時通気口は残すこと。

8 被せた土が凹んだら完成間近

被せた土が凹んだら木の体積が減って炭になっている証拠だ。ちなみにこの段階に来るまでに、空気の取り入れ穴から炎が見えたら燃焼してしまっているので、窯口を閉じるなどして空気が入らないように調節する。

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この時点になると、タールが出ている状態なので、煙は青っぽくなる。この後、煙が無色になれば完成。

9 煙突出口付近の煙が透明になったら取り出す

煙突の出口付近が透明になったら、煙の成分が抜けて熱だけを放出している状態なので炭はできあがっているはず。この時は点火してから2時間半ほどでこの状態まで進んだ。大きい窯だと8時間以上はかかるのでかなり短縮できた。上に被せたダンボールを剥がしていよいよ出炭だ。

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炭焼きは大成功! スコップを使って炭を拾っていく。上質な炭をかなり大量に作ることができた。

10 密閉できる容器に移して冷ます

作った炭を当日のバーベキューなどにすぐに使いたい場合は、燃焼を進行させないようにしつつ、冷まさなければならない。お菓子の缶などの密閉できる容器に入れて、川の水などを使ってしっかりと冷まそう。

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密閉容器に入れたら沢の水につけるなどして冷やすと良い。中に水が侵入して濡れてしまわないように注意する。