サルナシ

学名/Actinidia arguta
分類/ツバキ目マタタビ科マタタビ属
分布/北海道から九州
別名/シラクチカズラ、シラクチヅル、コクワなど
里山から奥山まで分布。雌雄異株(雄の株・雌の株)のある蔓植物。猿が好んで食べていることからこの名がついたと言われている。熊やテンなどもよく食べる。よく似た種類に紀伊半島以南の海岸山林に自生するシマサルナシがあるが、実の色が茶色く見分けやすい。
鈴生りの実を探そう
サルナシの蔓は林道沿いを探すと至るところに生えている。一度生え方を覚えてしまえば、探すのはさほど難しい植物ではない。しかしながら、里山周辺ではほとんどが雄株で、実をつける雌株はなかなか見つからない。里山よりは、少し標高のある林道沿いを探すとよい。なぜ林道沿いなのかというと、日の当たる山を背にしたような場所を好むからだ。これは、マタタビやヤマブドウなど蔓性の植物に共通する特徴である。
また、崖が道に崩れてこないように張られる土砂崩れ防止フェンスに絡んでいることが多いので、フェンスの辺りを探すと見つけやすく採集も楽だ。実は葉の茎の下側に実るので探す時は蔓を見上げるように探すと見つけやすい。
育ち方で実のなりがかなり違う。なかなか見つからないぶん、鈴生りのものを見つけた時は心がはずむ。最初は生食で何粒か食べ、あとは見える範囲できるだけ摘む。この時期は同じ環境でヤマブドウもシーズンだ。林道を探す時は同じようにヤマブドウも探せる。最近ではサルナシの苗木が品種改良され、色や大きさなど色々とあるようだ。
今年は全国で熊の出没が多い。今回のロケで帰り道に柿の木に登る熊の親子を目撃したところだ。木の実採集やキノコ狩りの際は十分注意してほしい。


実
形や大きさは株によって違いが出るが、丸型や楕円が多い。9~10月くらいに熟れて旬を迎える。

葉
葉の形は楕円で先が尖る。縁は細かなギザギザ。葉柄は赤く目立つ。蔓から伸びる茎も赤色になる。

蔓
蔓は黄土色で、蔓から分かれて葉や花をつける。枝は絡むことなく蔓から飛び出すように伸びる。

近似種マタタビとの違い
マタタビは科も目も属も同じで仲間ではあるが実は熟さないと甘くなく、ジャムには向かず、青い実を果実酒や塩漬けにする。虫瘤になった実はお酒で漬けて強壮剤とされる。

サルナシはキウイフルーツの原種?
キウイフルーツはサルナシが原種ではなく、中国原産のオニマタタビを改良して作られた。日本の気候でも育つことから一時期流行し、植える人が急増した。農家の庭に多い。
サルナシジャムを作る

1.大きい粒で3~4cm。旬のやや終盤で実は少し柔らかく甘みがあった。潰すので小さな粒でも使える。

2.実を流し水で洗いながら虫やゴミを取り除く。熟したものは柔らかくて潰れやすいので優しく洗う。

3.洗い終わった実のヘタを引っ張るよう取る。この時、腐っていたり、固すぎるものは取り除く。

4.ザルに入れてすりこぎなどで潰していく。ザルで濾すように潰して、残った皮はここで取り除く。

5.潰した実を鍋に入れ、混ぜながら弱火にかける。強火にすると焦げてしまうので注意すること。

6.お好みで砂糖を入れる。砂糖を多く入れると日持ちするが、少ないとあまり持たない。

7.強火にして焦がさないように10分ほど煮込む。ここで味をみて、甘くしたければ砂糖を足す。

8.ひと煮立ちさせたら中火にし、浮いているアクを丁寧にお玉などで掬って取り除く。

9.火を止めて冷ましたら完成だ。酸っぱさを加えたければレモン汁などを入れる。

完成
沸騰した湯に入れて殺菌したビンに、サルナシジャムを詰めたら完成だ。作った年月日を書いて貼り付けておくと管理しやすい。
【その他の活用法】
サルナシのリキュール
ホワイトリカーで作るサルナシ酒もおすすめ。香りのある梅酒のような味わいのリキュールだ。1年ほど寝かす。


日本野生生物研究所 奥山英治
テレビ番組やアウトドア雑誌、書籍を中心に、自然あそびや生きものに関する監修など多方面で活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに、子ども向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ)、『大人も子どもも楽しい あたらしい自然あそび』(山と渓谷社)などがある。











