ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。
今回の酷道

英彦山神宮から耶馬溪へ
山間部の観光地を通る酷道
福岡県田川郡添田町〜大分県宇佐市院内町
国道500号は、大分県別府市を起点に福岡県を経由し、佐賀県鳥栖市に至る総延長172キロ余りの国道で、明礬温泉や耶馬溪、英彦山神宮など、多くの観光地や景勝地を通過する。
今回、福岡県田川郡添田町の英彦山神宮付近から探索を開始した。なお、英彦山神宮までは、重複する酷道496号を走ってきたので、気になる方は前号(Vol.79)を参照していただきたい。
英彦山は古来より神の山として信仰され、今から1500年ほど前に英彦山神宮が創建された。由緒ある神社なのだがアクセスは容易ではなく、冬の朝8時ということもあってか、人影はほとんどなかった。
英彦山神宮は農業生産、鉱山・工場の安全の守護神、勝運の神様として崇敬されている。行程の安全と探索運の向上を祈願し、酷道500号の探索を開始した。
かつては英彦山よりもさらに西側、現在小石原川ダムがある付近にもなかなか骨のある酷道区間があったのだが、ダムが完成したことにより酷道は水没。2021年に高規格な付替道路が完成し、酷道区間は失われてしまった。
英彦山神宮を過ぎて東に進むと、いよいよ本格的な酷道区間が始まる。ワクワクしながら走っていると、県道451号との分岐に差しかかる。県道はオレンジのセンターラインが引かれているのに対して、国道は1車線しかない。「分岐で迷ったら狭い方が正解」は酷道探索の基本といえるだろう。
深いカーブの切り通しに、カーブミラーが設置されていた。カーブミラーは根元でL字型に曲がっている。狭い道路で道幅を確保するための工夫なのだろう。
野峠で国道496号と合流し、この先は重複区間となる。酷道は長くは続かず2車線道路となり、さらに国道212号と重複する。青の洞門付近からは再び国道500号の単独区間となるが、依然として快走路が続く。
中津市と宇佐市の市境付近で再び酷道区間が始まる。酷道区間の入り口に、幅員減少の道路標識が立っていた。そして、その下の補助標識には「大型車離合困難」と書かれていた。離合とは対向車とのすれ違いを示す交通用語だが、九州を中心に西日本方面で用いられてきた方言でもある。道路標識に九州らしさを感じて、少しほっこりした。
酷道区間は宇佐市院内町で終わり、その先、起点まで快走路が続く。院内町といえば、日本で最も石橋アーチ橋が多いことで知られている。酷道の次に私がどこに向かったのかは、ご想像にお任せしたい。

左の広い道が県道、右の細く暗い道が国道だ。

英彦山神宮で道中の安全を祈願して探索スタート。

カーブミラーの根元がL字型に曲げられている。

離合は全国的に通用する言葉ではあるが、東日本ではまず見かけることがない。
鹿取茂雄
酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/
















