【vol.79】第47回 伝統保存食入門

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ガリ

寿司の薬味としておなじみのガリ。新生姜の甘酢漬けである。僕はこのガリに目がなくて、あればいくらでも食べてしまうが店でそれをやるのは、はしたない。自分で作ればいくらでも食える!というのが今回の趣旨である。

思い切りガリを食べたい!

生姜の甘酢漬けのことをガリと呼ぶが、僕の大好物のひとつだ。寿司屋に行くのはガリを食べに行くためと言ってもいいくらいだ。カレーに添えるラッキョウや福神漬け、牛丼や焼きソバに添える紅生姜なども大好きで、カツオの土佐造りを作る時もカツオの身の量の倍以上のネギ、ミョウガ、大葉を用意して作る。僕はどうやら薬味フリークであるらしい。

ガリは煮アナゴから白身や光モノなど、ネタの味が切り替わる時に口の中をサッパリさせるためにあるらしいのだが、江戸時代からすでに存在していたらしい。昔は食中毒防止の目的の他に、シャリが指に付かないようにおしぼり代わりに手を湿らす目的もあったのだとか。軍艦巻きに醤油を付けるときにもガリに醤油を付けて刷毛代わりに使うこともできる。なんと素晴らしい!

ガリは通常、寿司屋でしかお目にかからないから(スーパーでも売ってはいるが)薬味としての食べ方しかあまり考えつかない。ちらし寿司や稲荷寿司に刻んで入れるのは試したことがあって、なかなか美味かったのだが、大量にあるならと、これも大好きな紅生姜天ならぬガリ天(ガリのかき揚げ)を作ってみた。紅生姜天の特徴であるちょっとB級グルメ的なところはなく、色味的にも結構お上品な感じになるのは仕方ないが、味はもう絶品であった。ガリ好きな人は是非お試しあれ。

【材料】
新生姜300g、だし用昆布1枚、酢120cc、砂糖大さじ5、塩小さじ1(半量は漬け汁、半量は茹でる際に使用)

【作り方】
1. 昆布でだしを取る。水に対して1%量の昆布が必要。今回使うだしは80ccなので小ぶりのものが1枚あれば十分。水出しならば1晩浸けておくだけ。煮出しならば30分含水させてからひと煮立ちさせればOK。
2. だし、酢、砂糖、塩を混ぜ合わせて沸騰するまで加熱。その後、冷ましておく。
3. 新生姜は小分けにしてから皮を剥く。先端の赤い部分は全体の色付けのために切らないでおくこと。
4. 繊維に沿って(伸びていく方向と同じ方向)できるだけ薄くスライスする。
5. 沸騰した塩入りのお湯に入れて1分ほど煮る。
6. 水気をしっかりと切る。手でギュッと握ってしっかり絞ること。
7. 煮沸し滅菌消毒した器に水気を絞った新生姜をほぐし入れ、漬け汁をヒタヒタになるまで注ぐ。
8. 最低3日は漬け込む。新生姜の先端の赤い部分が少なくても酢と生姜のアントシアニンが反応してピンクっぽくなってくる。この色の変化も漬かった目安。

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新生姜はあまり大きなものだと中心部が硬くなるので、中ぐらいで適度に枝分かれしているものを選ぶといいだろう。今回は味の柔らかさを求めて、酢は米酢や穀物酢ではなくリンゴ酢にしてみた。

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できるだけ薄くスライスするのがポイント。包丁の研ぎも合わせて腕の見せどころだ。本誌読者なら問題なくこなせるに違いないが、心配ならピーラー使用でも構わない。

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茹でたらしっかり水切りをする。サラダスピナーなどで水切りをした後で、手でキッチリ絞って水分を抜く。この作業の有り無しで味の染み込みに大きく差が出る。

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写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。