ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。
今回の酷道

冬は路面凍結、夏は土砂災害
福岡・大分県境をゆく酷道
福岡県行橋市〜大分県日田市
国道496号は、福岡県行橋市を起点に、終点の大分県日田市までを結んでいる。延長55キロ余りの、少し存在感の薄い国道ではあるが、福岡・大分県境の野峠に酷道区間がある。
この酷道へ向かうべく、私は自宅のある岐阜を出発し、九州ではなく大阪に向かった。カーフェリーに乗るためだ。船上では思わず猫のキャラクターグッズを買い込んでしまい散財したが、早朝には門司港に着くことができた。
日の出とともに行動を開始し、向かうのはもちろん酷道496号だ。まずは起点である行橋市まで移動し、探索を開始した。
快適な2車線道路を南下するが、山に入ってくるとセンターラインが消え、徐々に酷道が近づいてくる。まだ1.5車線程度の幅員があり、対向車とすれ違うことができるため、酷道と呼ぶには少々物足りない。
この付近は道路の改良工事が進行中で、仮設の真新しいアスファルトが敷かれていた。近い将来、2車線の快適な道路に生まれ変わってしまうのだろう。
“この先 積雪 凍結注意”の電光表示板が現れた。九州は温暖な気候のイメージが強いが、標高が高くなれば当然雪も降るし凍結もする。国道496号も例外ではなかった。
野峠が近づいてくると、ついに対向車とすれ違うことができない道幅となり、物足りなさは解消された。ついに満足のゆく酷道を満喫することができる。
カーブに差しかかる度、数字が掲示されるようになった。カーブ1から始まり、カーブ24といった具合に数字が増えていく。山道では目印になる建物等がほとんど無いため、事故の通報や管理において、全てのカーブに番号を振っておくことで、場所の特定が容易になる。カーブナンバーも、酷道ならではの光景の一つといえるだろう。
走り始めて1時間ほどで、標高721メートルの野峠に到着した。ハイキングコースの入口もあるため、時期がよければ需要があるのかもしれないが、訪問した時は冬だったため、人の気配が全くなかった。
県境の野峠で道は三叉路になっており、国道496号はこの先、国道500号と重複して大分県日田市へと向かう。もう一本の道は、国道500号として福岡県朝倉市に伸びている。
496号はこの先も続くのだが、重複する国道500号も良い酷道なので、改めて500号として紹介したい。“良い道”と書くと誤解を生じるが、我々酷道マニアのいう良い道とは、酷い道のことだ。世間の認識とは正反対の意味になるため、ご留意頂ければ幸いだ。

酷道がはじまる付近では改良工事が行われていた。

九州でも凍結や積雪はある。

カーブに番号が振られていた。

野峠付近に到達。道はこの先三叉路に分岐している。
鹿取茂雄
酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/