7月某日、ついにこの日が来てしまった。朝、平静を装って鶏小屋に行く。4年前に3羽でスタートしたのが、今や18羽に。やむなくオンドリ3羽を淘汰することに決めた。
家畜の世界には面倒な存在から殺されていくという現実がある。まず、いつもサンちゃんをいじめているヨモギが文祥に連れて行かれた。あっという間にナイフで首を落とされ、脚を上にして流しの中に体を突っ込み血抜きする。落ち着いたら沸かしておいたお湯に体を沈めてから羽をむしる。世界中で今日も誰かが鶏の羽をむしっている、と想像しながら、今日だけわたしも仲間に加わらせてもらう。
ヨモギの肉はクリスマスにストーブで丸焼きにしよう。チビオス2羽分を精肉して、夕飯にチキンカレーを作った。「インドで食べたカレーはこんなのだった」と文祥が言った。
普段は見かけないちょっと怖そうなおじさんに仲間が連れて行かれ、そのまま戻ってこないとなれば、ニワトリたちもさすがに何か感じることがあったのだろう。その日一日、庭は妙に静まりかえっていた。


服部家の生き物
「ナツ」 ♀ エアコンって良いものですね。
「ヤマト」 ♀ トタン屋根の上で寝ています。
「チャボたち」 また卵を温めているメスがいます。
服部家の人々
「ブンショウ」 小蕗の野菜の収穫量が上がってきました。
「コユキ」 この夏30年ぶりに仙丈ヶ岳へ。
「シュウ」 ボルダリングに夢中です。
「ショウタロウ」 調理師を辞めて、美大にチャレンジ!?
「ゲンジロウ」 9月に海抜ゼロから富士山に登ります。
服部小雪
イラストレーター。登山家・服部文祥と3人の子供たちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの野性な毎日』(河出文庫)が発売中。