【vol.78】食用魚として移入された繁殖力旺盛な外来種「アメリカナマズ」

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アメリカナマズ

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学名/Ictalurus punctatus
分類/硬骨魚綱ナマズ目イクタルルス科
分布/霞ヶ浦、北浦、利根川水系、琵琶湖など(外来分布)
別名/チャネルキャットフィッシュ(和名)

原産地はアメリカで、食用目的で日本に入りその後、養殖場から逃げ出して増えはじめたと言われている。日本では利根川水系や霞ヶ浦が有名ではあるが、各地で見つかっており、最近では北海道でも確認されている。在来の魚や虫、貝や植物まで食べる大食漢で、各地で被害が出ていて駆除の対象魚にされている。

アメリカナマズは食用向き

アメリカナマズは特定外来生物に指定されている駆除の対象魚ではあるが、実は美味しい。食用としてアメリカから移入した魚なので不味いわけはない。フィッシュバーガーの素材など色々な料理で、世界各国において食用として楽しまれている。釣っても手応えがあって楽しく、食べても美味しいのでお勧めしたい。注意したいのは、特定外来生物は生かしたまま移動することができないので、その場で殺してから持ち帰るということだ。

以前、愛知県矢作川のアメリカナマズを食べたが、めちゃくちゃ美味かった。しかし茨城県霞ヶ浦のアメリカナマズはとにかく味が埃っぽかった。要するに匂うのだ。同じ魚でも川によって味が異なるため、できれば綺麗な川で捕まえて食べるとよいだろう。匂いのもとである泥臭さはゲオスミンという物質で、生臭さはピペリジンやアミノレバラールなどが原因だという。

匂いレベルが段違いの霞ヶ浦の個体をなんとか美味しく食べるために魚料理屋さんの友人にコツを聞くと、釣れたらすぐに血抜きをして、内臓と鰓を取り除いて氷水で持ち帰る。これで大抵は匂いが薄れるという。天ぷらなどの揚げ物にする場合は、高温で揚げるのもコツだ。ぜひ実践してほしい。

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日本のナマズと比較すると、シルエットが全然違う。日本のナマズは底を移動するのに適したスタイルだ。顎も大きく異なる。

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日本のナマズは底を泳ぐ底物のスタイルに対し、アメリカナマズは川全体を泳げるスタイルだ。

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8本のヒゲは簡単に言うとセンサー。獲物を判断したり、触ったものを判断でき自由に動く。

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背ビレの棘条が太く鋭いのがナマズ目の特徴。鰓ビレにも棘条があるので捕獲時は注意しよう。

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鰓ビレは背ビレと同じく第1棘が太くギザがあり刺さると抜けにくい構造。日本のナマズ類も同様。

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頭の骨。鰓の第1棘は頭の骨と関節のような形で繋がっている。鰓のところにある棘のような骨も不思議だ。

アメリカナマズの天ぷらを作る

 

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1.何匹も釣れるので手頃なサイズを選んだ。大きいほど脂は乗っているが今回は60cmほど。大きい個体だと1mほどある。

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2.以前お寿司屋さんが「匂う魚は皮をよく洗え」と言っていた。たわしを使って水を流しながら全体を丁寧によく洗う。滑りもこの時取れる。

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3.鰓の横にある尖った硬い骨。なんとも不思議で包丁も刃が立たないほど硬く太い。下ろす時はここを避けて頭部は使わない。

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4.現場で内臓と鰓は落としてきたが細かな赤い部分や血合が残っているので丁寧に取り除く。この時匂いを嗅いでみたが臭くなかった。

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5.頭の部分は使わず、鰓から尾にかけて三枚に下ろす。包丁を入れながら身をチェック。皮と身の間の黄色い層は脂。この個体は少なかった。

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6.アバラを取り除き、皮をひく。ナマズは皮がうまいのだが、食べやすさを考えて今回はひいた。唐揚げの場合は皮がついている方が美味い。

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7.天ぷら衣を作り、少し高温(180~190℃)で焦げないようにチェックしながら揚げる。高温も匂いを飛ばしてくれるらしい。

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8.天ぷら衣を作り、少し高温(180~190℃)で焦げないようにチェックしながら揚げる。高温も匂いを飛ばしてくれるらしい。

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9.全体に薄く茶色になったら順番に油から上げて油を落とす。ドキドキの瞬間だ。匂いはあるのか?ないのか? 何もつけずに味見!

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完成

サクサク感が最高な仕上がり。泥臭さ、埃っぽさがない。普通に白身魚の天ぷらだ! 微妙に川魚っぽさがある程度。現場で捌くのは面倒だけどこれはイケる!

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<その他の活用法>ナマズバーガー

やはりこれでしょ。定番のナマズバーガー。水分を十分抜き、黒胡椒を振って溶き卵をつけ、パン粉をつけたら油で揚げる。これをレタスとタルタルソースとともにバンズで挟めば完成だ。

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日本野生生物研究所 奥山英治

テレビ番組やアウトドア雑誌、書籍を中心に、自然あそびや生きものに関する監修など多方面で活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに、子ども向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ)、『大人も子どもも楽しい あたらしい自然あそび』(山と渓谷社)などがある。