【vol.78】にわとりのいる暮らし No.57

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ガアガアガア!と鶏どもが騒ぐ声で目が覚めた。春の鶏たちはやたらと元気。あわてて朝ごはんをやりに行く。食事タイムはメンドリ同志のケンカやオスによるイジメ、そこに走り回る8羽のヒナが加わって庭はカオス状態だ。

日々の食事はくず米、野菜くずなどだが、今の時期は冬の間に干しておいた鹿のアバラ骨がある。アバラ骨は鶏たちの大好物だ。叩き台の上でアバラ骨をナタで砕き、ヒナたちにはハサミで肉の部分を細かく切ってやる。

ナタを振るう音に、カラスやスズメが集まってきて木の影から熱い視線を送ってくる。我が家はニワトリを飼うことで野鳥の保全に貢献しているのかもしれない。先日、落ちていたアバラ骨を丸ごと持ち去るカラスを見た(骨が重たくて飛行中に落とすこともあるようだ。近所の皆様、道路に不気味な骨が落ちていたらごめんなさい)。

虫一匹に大騒ぎする母親に育てられ、あまりに整いすぎた環境の反動か、いろいろな生き物が蠢く世異に憧れた。異種との共存は面倒臭いことばかりだが、予期できないことであふれていてもう元に戻ることはできない。

知らなかったことといえば、早春、庭の茶の木が大きくなり新芽をつけていたので、お茶作りに挑戦した。200グラムほどの新芽を短時間蒸して酵素の動きを止め、手で揉みながら気長に煎り、乾燥させる。1時間半ほどかけて約40グラムほどの煎茶が出来上がった。少し山椒のような香りが出てしまったが、味はまずまずだった。知らず知らずのうちに、なんでも自力でやりたがる夫の影響を受けているのだろうか。夫に煎茶を試飲してもらうと「オレが好きな静岡茶とは違うけど、普通においしい」と言った。ちょっぴり誇らしい。お茶は自分で作ることができる、それが分かっただけで何かが変わった気がした。

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服部家の生き物
「ナツ」 ♀ シニアになり寝ている時間が増え太りました。
「ヤマト」 ♀ 屋根裏をネズミが走っているけれど知らんぷり。
「チャボたち」 現在オス2羽、メス8羽。ヒナは8羽中3羽がオスのようです。

服部家の人々
「ブンショウ」 長距離ランと畑仕事で、さらにスリムになっています。
「コユキ」 久々に壁塗りをやっています。
「シュウ」 フォカッチャ焼くのが得意です。
「ショウタロウ」 東京の小学校で給食を作っています。
「ゲンジロウ」 大学生活の不摂生で丸くなっています。

服部小雪

イラストレーター。登山家・服部文祥と3人の子供たちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの野性な毎日』(河出文庫)が発売中。