【vol.75】酷道345号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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影は薄いが変化に富む
山形に残る短い酷道区間
山形県鶴岡市菅野代〜山形県鶴岡市小名部

国道345号は、新潟県新潟市中央区を起点に山形県飽海郡遊佐町までを結ぶ総延長225キロ余りの国道だ。比較的距離が長いが、他の国道との重複区間が70キロ以上あり、ほぼ全区間が国道7号と並行しているため、本当に国道である必要があるのかと問いたくもなる。

しかし、国道が国道であるのには、それなりの理由がある。国道の要件は道路法第5条で規定されている。国道345号は県庁所在地である新潟市を起点とし、新潟港や新潟空港を通過するため、条件を満たしている。

新潟県村上市から山形県境にかけては日本海にべったりと沿っている。この付近は〝笹川流れ〟と呼ばれる景勝地で、かつては345号最大の酷道区間だった。改良が行われ、現在は快適に走ることができる。

では、酷道区間がどこにあるのかというと、山形県鶴岡市内にわずかな距離ではあるが、残っている。距離が短いからといって、走らない理由にはならない。

私は北から南下することにして、山形県酒田市付近から国道345号に入った。市街地をかすめて海の近くを南北に走る国道7号に対して、345号は山の方に大きく迂回する線形となっている。鶴岡の市街地を抜けると、のどかな山村部の風景となるが、2車線は確保されている。

しばらく南に走っていると、向きを西にと変える。このあたりから、ついに酷道区間がはじまる。関川の集落内でセンターラインが消えた。一見すると、どこにでもある田舎の生活道路にしか見えないが、れっきとした国道だ。

集落を抜けると情報板が立っていた。

“幅2.0m超通行禁止”
“大雨のとき全面通行止”

これを見ると気持ちが高ぶる。私の愛車は軽自動車のソニカなので、幅2mだったら余裕かと思いきや、意外と狭い。道幅が2mなら、車幅2mの車は走れない。直進だけなら走れるが、少しでもカーブするとはみ出してしまうからだ。この道は、そのあたりも考慮されているのだろうか。いずれにしても、大型車が走れないことは間違いないだろう。

田んぼの脇を走っていたかと思えば、林の中へと突入した。雨が降っていたこともあり、林の中は薄暗い。次の集落が近づいてくると2車線道路となり、楽しかった酷道区間は終了した。

酷道区間の距離は6、7キロ。ゆっくり走っても15分もあれば通過してしまう。短いながらも、集落、田んぼ、林と変化に富んだ酷道だ。新潟から山形方面を訪れる際には、笹川流れも含めてぜひ訪れていただきたい。旧道もお見逃しなく。

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軽自動車なので、道幅にはまだ余裕がある。

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田んぼの脇をゆく。この道が国道と言われても、納得し難いだろう。

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道幅は一定ではなく、所々急に狭くなったりする。

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ゆっくり走っても15分ほどで酷道区間を走破。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/