もう本誌読者は半分足を踏み入れている自立した生き方 野良人への誘い

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ぬくぬくと家畜として殖えるか
凍えても野良として抗うか

文/服部文祥

服部 文祥

登山家。作家。1969年横浜生まれ。94年東京都立大学フランス文学科卒(ワンダーフォーゲル部)。登山をオールラウンドに高いレベルで実践し、96年世界第2位の高峰K2(8611m)登頂。99年から長期山行に装備と食料を極力持ち込まず、食料を現地調達する「サバイバル登山」を始める。著書に『獲物山』『獲物山Ⅱ』(ともに笠倉出版社)、『サバイバル家族』(中央公論新社)、『サバイバル登山入門』『アーバンサバイバル入門』(ともにデコ)、『サバイバル登山家』(みすず書房)など。『ツンドラ・サバイバル』(みすず書房)が第5回梅棹忠夫山と探検文学賞。小説『息子と狩猟に』(新潮社)が第31回三島由紀夫賞候補作。山岳雑誌『岳人』編集者。

 中越大震災のテレビニュースで、孤立した村に住むおばあちゃんへのインタビューが流れていた。「大変ですね」という聞き手に、おばあちゃんは「大変ではないよ」と笑った。「困ることはなんですか」と聞かれても「困ることはない」と返答は変わらなかった。

 認知症だったという可能性はある。周辺には、被災して困っていた人もいたはずだ。それでも私は、おばあちゃんは健常で、発言は本心だったのではないかと思っている。農家であれば、穀類は貯蔵され、野菜は菜園に入っている。家が倒壊せず、飲料水が確保できていて、大きな持病がなければ、早急に困ることはない。ガスはプロパンかもしれないが、おばあちゃんが若いときは、柴や薪で煮炊きするのは当たり前だったはずだ。敷地の端にはおそらくポットン便所があるし、なければちょっと茂みに入っていけばいい。