シンプルな道具と技法でたんぱく質を得る 延べ竿マスター

22 01

身近な川・池・水路で採集

身近なアウトドアといえば、やはり釣りだ。子供のころに、近所を流れる小川などで釣り糸を垂れた経験があるのではないだろうか。今回は、こちらの記事にて製作した小物釣り用の竹竿で手軽な川釣りに興じてみた。釣った魚は持ち帰り、川魚料理を作ってみるのも面白いだろう。

写真・文/相原由和

我々の身近な河川に魚が潜んでいる。簡単な仕掛けで釣れるので、家族連れで楽しむのもあり。

本誌記者が実釣体験和竿で小物釣りを堪能する

 自分で釣った魚を食べる。アウトドア好きなら、誰しも1度は経験があるのではないだろうか。といっても、荒磯の海や山深い渓流に出向く必要はない。近所を流れる小川や湖沼、あるいは田んぼに引かれた小さな水路などでも魚は釣れるのだ。

 今回は、埼玉県川口市の『山野和竿店』で製作した全長1.55mの和竿を使い、身近な小物釣りを楽しむことに。本誌記者が向かったのは、東京都西部を流れる秋川の中流域。ここは魚影が濃く、長竿ならアユやヤマメ、コイ、ナマズ、短竿なら淀みや深場でオイカワ、ウグイ(関東ではハヤと呼ばれる)、カワムツ、アブラハヤといった小物釣りが楽しめる。道具立ては至ってシンプル。竿先に道糸を結び、ウキとハリを付けただけの簡単な仕掛けだ。

 午前10時過ぎ。まずは川幅があり、流れの淀んだ場所で釣り糸を垂れる。夏休み中とあって、河原はBBQを楽しむ親子連れなどで賑わいを見せている。そんななか、記者は釣る気マンマンである。水面にぷかぷか浮かぶウキを見つめながら、「釣れろ、今すぐ釣れろ」と念じる。

 しかし、実釣開始から1時間が過ぎても魚の反応はない……。「どういうことなんだ、手軽に楽しめるのが小物釣りじゃないのか!」と悪態をついてみたものの、釣れない理由は自分でも何となくわかった。川幅が広すぎて、短竿では魚のいる位置まで仕掛けが届かないのだ。

 そこでお次は、川筋を探索しながら狭い流れ込みを探る作戦に出た。最初からそうしておけ、という話なのだが、ちょっと欲が出てしまった。

 さあ、今度こそ釣れろ!

堰堤の下は、釣りの実績ポイントだ。近づきすぎると警戒心の強い魚は逃げてしまう(反省)。

辿り着いたのは用水路
小型のアブラハヤをゲット

 魚影を求めて小川や水路を歩くのは、なんだか探検をしているみたいで楽しい。そして辿り着いたのは、田んぼの近くを流れる幅2mほどの小さな水路。多摩川の合流点から1.5kmほど上流に位置するポイントだ。水面を覗き込むと、水深30cmほどのカーブに全長7~10cmのアブラハヤの群れが見える。群れを散らさないように上流から静かに仕掛けを流すと、竿先をクイクイと曲げる魚の引きが伝わってきた。ヤバイ、超楽しいんですけど……。

 水面からひょいと上げたのはアブラハヤ。念願の魚を手にして、子供のようにはしゃぐ記者。観察用のクリアケースに水を満たし、その魚体をしげしげと見つめる。愛くるしい大きな目、陽光に輝く銀色のウロコ。こんな身近な場所に、こんな楽しみがあったとは!

 調子に乗って2尾目を狙うも、川魚は超デリケート。記者の足音に警戒したのか、同じように誘っているのに全く口を使わなくなった。

 アブラハヤ1尾が入ったバケツを片手に、魚影を探しながらあちこちを歩き回る。途中、水中の溶存酸素がほとんどなさそうな水路の行き止まりで、フナらしき魚が水中でヒラを打つ姿が確認できたが、仕掛けを落としても反応はない。全長2cmほどの正体不明の餌取りが練り餌をつつくだけで、ハリ掛かりするような魚とは出会えなかった。

 気づけば、時刻は午後4時を過ぎている。夢中で釣りをしていると時間が経つのは早いものだ。せっかくの実釣体験なのに、まさかアブラハヤ1尾で終わるわけにもいかないだろう。夕方から、どこで釣りをするか考えなければならない。

昼過ぎに訪れた小さな水路にはアブラハヤの群れが生息していた。魚影を求めてズンズン進む。

小魚を鑑賞するためのクリアケースがあると、釣りの楽しみがグッと広がる。めちゃかわいい!

マヅメ時にカワムツ連発
日の出・日没は釣れる時合

 魚は、マヅメと呼ばれる時間帯が最も釣れる。日の出と日没の前後は、魚が餌を捕食しようと活発に動き回る時間帯なのだ。その時合で訪れたのは、多摩川の支流は鯉川中流域。堰堤の深みに小魚が群れているのを発見した。流れが少しあるため、餌はミミズを1~2cmに切ったものを付ける。すると、餌が川底に沈んだあたりで、すぐさま魚信が伝わってきた。さすがは名人の作った和竿である。めちゃくちゃ感度がいい。ウキが引き込まれたのを見計らい、スパッと合わせを入れる。釣れたのは12cmのカワムツだ。産卵前のメスなのか、お腹がぱんぱんに膨れている。せっかく釣れた魚だが、こいつは逃がしてやることに。そうすれば、また子供が増えるに違いない。

 夕マヅメの時合とあってか、以後はミミズを落とすたびにカワムツが釣れる。土手で犬を散歩させていたおじさんが「強いアタリは小型、じわ~っと引き込むような弱いアタリは良型だよ」と教えてくれた。

 そして釣果が10尾を超えたところで、いつしか魚のアタリも遠退いたために納竿を決めた。

 川の小物釣りは、通年楽しめる。真冬など食いが落ちる時期もあるが、仕掛けを工夫すれば釣果は伸びる。道具もまずは安価なものでOK。自作の竹竿ならば、魚が釣れたよろこびもひとしおだ。釣りのあとには、お楽しみの川魚料理が待っている。皆さんも、たまにはのんびり釣り糸を垂れてみてはいかがだろうか。

多摩川水系の鯉川で釣れたカワムツ。生き物と簡単に触れ合えるのが釣りの醍醐味。魚は、手を濡らしてから触るのが基本だ。

天然素材の竹竿。魚の小さなアタリも手元にビンビン伝わる。体験教室などで自作するのも面白い。

朝夕のマヅメ時は、魚の活性が高まるチャンスタイム。ときには入れ食いになることも。

小物釣りの主な対象魚

短竿の小物釣りで狙える代表的な魚は以下の通り。他にも場所によってはコイ、フナ、タナゴ、ハス、モツゴ、ワカサギが釣れる他、外来種のブラックバスやブルーギル、専用バリを使ってテナガエビと遊んでみるのも面白い。釣魚図鑑を1冊持っておくと釣った魚を判別したり、次はどんなターゲットを狙いたいか想像したりと楽しみが増える。それぞれ食べ比べてみるのもあり。

アブラハヤ

東日本の上~中流域にいるコイ科の魚。流れの緩い場所を好み、高活性時は餌を落とすたびに釣れることも。近縁種に中部地方以南に生息するタカハヤがいる。全長はどちらも15cmほどだ。

カワムツ

関東以南に分布するコイの仲間。全長15cmほどで、河川の中流域や湖沼などに生息。好奇心旺盛で、毛針やルアーでも釣れる。中~下流域では、これによく似たヌマムツという種類もいる。

オイカワ

元々は関西方面に生息していたが、現在は東北以南の各地に分布。梅雨から夏にかけてオスは派手な婚姻色になる。その美しい魚体から餌釣りはもちろん、フライフィッシングの人気も高い。

ウグイ

関東を始め、「ハヤ」と呼ぶ地域も多い。河川の上流から下流まで幅広いエリアにいる。小川や湖沼で釣れるのは全長15~20cmだが、汽水域では降海型の大物も釣れる。冬場は非常に美味。

小物のウキ釣り仕掛けと釣り方

ウキ釣り仕掛け

今回は、1.55mの手竿(竹製の延べ竿)を使用。ホソと呼ばれる小川、田んぼの水路などで小物釣りを楽しむのにぴったり。仕掛けの長さ(穂先からハリ先まで)は、竿の全長に合わせるのが基本。道糸はナイロン0.6~0.8号、ハリスは0.4号、ハリは袖2~2.5号をセット。道糸の途中にウキを付ければ、餌を一定の水深で流しやすく魚のアタリも見えるため、より釣りやすくなる。

(ウキ釣り仕掛けを手元側から順に)

延べ竿/全長1.55mの小物釣り用。竿の長さは釣り場の規模(川幅など)によって使い分ける。

蛇口(へびぐち)/ここに道糸を結ぶ。通常はチチワで結ぶが、しっかり止まれば何でもOK。

道糸/ナイロン0.6~0.8号を140cm前後。ウキの大きさによっては、下にガン玉を付ける。

玉ウキ/一定の水深で仕掛けを流したり、魚のアタリを取るのが目的。ウキ止めを通しておく。

ハリス止め/ヨリモドシ、サルカン、スイベルとも呼ばれる回転式連結金具。糸ヨレを防ぐ。

ハリス/ナイロン0.4号を15~20cm。細いハリスを使えば、餌を水中で自然に漂わせられる。

ハリ/袖2~2.5号。釣具店でハリス付きのものが売られている。魚の大きさに合わせて選ぶ。

餌は、ミミズを1~2cmに切ったものを使った。指の爪でミミズを千切るときの「ブチッ」という感触が苦手ならば、小石で切断してもOKだ。虫が苦手な人は、練り餌を使おう。

服装&必要アイテム

この時期の水辺は、蚊やブユ、マダニといった吸血動物がウヨウヨ。肌を露出していると、すぐに刺されるので注意したい。服装は長袖、長ズボンがおすすめ。首元や手首に虫除けスプレーをシュッと吹いておこう。足元は、ゴム長靴や防水ブーツで固める。ゴロタや草場を歩くときに怪我を防止できる上、ヒルに血を吸われる危険性が少なくなる。他にも、釣った魚を入れるためのバケツや、仕掛けを作ったり、魚の口からハリを外したりするための小型プライヤーがあると便利。

昨今の夏は日中の最高気温が35度を超える日も珍しくない。そこで当日はTシャツに登山用タイツという涼しげな軽装で現場に向かった記者。もちろん虫に刺された。ありがとうございます。

小物のウキ釣り

餌を漂わせる水深(タナ)は、対象魚によって異なるが、休日の気軽な釣りを楽しむなら、多彩な魚種が狙える底付近を探るのが面白い。ウキの位置(ウキ下)を調節して、餌が川底スレスレを漂うようにしよう。そして、魚のアタリがあると、水面のウキがツンツンと揺れる。ただ、この段階で合わせ(竿先をあおってハリを掛ける動作)を入れても、なかなかハリ掛かりには至らない。魚が水中にウキをしっかり引き込んでから竿を立てると、釣れる確率が大幅に高まる。

魚は通常、流れの上流に頭を向けて定位している。魚の群れの上流側から仕掛けを流し、相手の口元付近で餌を漂わせると、アタリがグッと増える。魚がいるのにアタリがないときは、竿先を軽く前後させて誘ってやろう。

釣り場の選び方

 小物釣りの舞台となるのは、ホソと呼ばれる小川や農業用の水路など。土手や橋の上から川面を見ると、流れの周囲や障害物の陰に大小の魚の影が確認できるはずだ。まずはそのような場所を発見したい。ウキ釣りのおすすめポイントは、堰堤の下流側にある深み、アシ周り、地形がワンド状になっているところ。魚のいる場所に仕掛けを確実に送り込む必要があるので、今回のように短竿で釣るときは、まめに立ち位置を変えて、魚の反応が最も出やすいポイントを探ろう。

漁協が管理する河川で釣りをするときは遊漁券が必要だ。対象魚はアユを始め、ヤマメ、イワナなど。河川によっては雑魚釣りでも許可が必要な場合も。遊漁券は地元の釣具店で購入できる。

釣った川魚を食べよう

調理前の下ごしらえ

釣りは、魚を食べるのも楽しみのひとつ。川魚は、種類や釣れた場所によって寄生虫がいることがあるので、2日ほど冷凍保存してから調理するのが無難(加熱調理ならそのままでもOK)。ウロコが気になるときは、ナイフの刃先で尾から頭に向かって撫でてやると簡単に取れる。また、川魚のはらわたには強い苦みがあるため、腹を割いて内臓やエラを抜き取っておこう。流水で表面のぬめりや汚れをきれいに落としたら下ごしらえは終わり。さあ、あとは調理するだけだ!

【魚の締め方】

魚の締め方は主に2種類。1つは、エラの奥に刃先を入れて、背骨をブチッと切断する方法(活け締め)。血抜きもできるため、中型以上の魚を釣ったときにおすすめ。対して小型魚は、匂いが他の食品に移らないよう密閉式パックに入れ、そのまま冷凍庫で凍らせるのもあり(氷締め)。

自分で釣った魚を食べるのも楽しい。食べる分だけを持ち帰り、それ以外はリリースしてやる。

川魚の調理方法

釣魚図鑑で川魚の項目を見ると、「普通は食べない」とか「うまい魚ではない」などと記されている。そのため、食すのをためらうことがあるかもしれないが、常食されていないだけで、釣った川魚を食べるのは至って普通。塩焼き、甘露煮、揚げ物、天ぷらなどで食べられる。ただし生食の場合は、寄生虫対策としていったん冷凍保存してから調理するなどの工夫が必要となる。

小魚のフライ

小型のカワムツとアブラハヤは揚げ物にしてみた。小川や水路で釣れる10cm以下の小魚は可食部が少ないが、フライにすれば丸ごと食べられるため、満足度も高いはず。実際に食べてみるとちょっと骨が多いものの、揚げたてはサクッとした食感でなかなかおいしい。おすすめです。

中温で揚げる
小麦粉、溶き卵、パン粉の順に衣を絡める。中温(170 ~180度)の揚げ油に入れ、表面がこんがりキツネ色になったら、油切り用のバットに載せる。

サクッとした食感
レタスなどを添えて、皿に盛りつけたら完成。おかずにはもちろん、酒のつまみにもぴったり。

カワムツの塩焼き

15cm以上の川魚が釣れたら、塩焼きにしてもいい。カワムツは身が柔らかく臭みがあるため塩焼きには向かないとされるが、今回は水質もきれいだったのでバーナーで網焼きに。強めの火力で、遠火でじっくり焼き上げるのがコツ。中・上流域の川魚は、脂の乗った冬場が特に美味。

塩を振る
魚の口から串を打ち、両面に塩を振る。内側までしっかり火が通るように遠火で焼き上げる。火が近すぎると、表面だけ焦げてしまうので注意しよう。

素朴な味わい
皿にシソの葉を添えると見栄えがよくなる。皮は厚めながら、口いっぱいに香ばしさが広がる。