我が家はチャボの他に犬、猫を飼っている。「鹿の雑肉を餌にできるのでは」「猟をするパートナーとして」「ネズミ対策に」という具合に、夫の文祥の明確な目論みがまずあり、野生界と人間界の繋ぎ役として、あるいは人間の営みを手助けする役目を担って、生き物たちはやって来た。
そのうちにネズミは自然消滅し、猫は丸々太って寝そべるだけの存在になってしまった。犬は山で過ごす時間が長く、半野生状態で暮らしているので、家族からいつなんどき死ぬか分からないと思われている。チャボは人間との交流がほとんどなく、ただ庭にいつもいる野鳥、という感じだ。
シーシーが孵したヒナたちは三ヶ月経って美しい若鶏になった。母鶏が卵を孵して子育てする様子を間近に見られたことは、胸が躍るような経験だったが、ニワトリを繁殖させると、必ず起きる問題がある。オンドリは複数羽いると鳴き声が騒音になるだけでなく、争いごとが絶えない状態になってしまうのだ。
この夏、四羽のうちオス二羽を絞めることにして、暴れん坊のキー丸と、気の強いレモンをコフキ行きの箱に入れた。その様子を見ていたシュウは「命の選別だね。母チャンが殺したんだ」と笑顔で言った。
二羽はしばらくコフキで飼われていた。赤いトサカ、白と黒の羽根を持つチャボは古民家の草茫々の庭によくなじみ、夜は庭の隅っこで寄り添うように眠っていたという。文祥はすっかり情が移ってしまい、殺すのが可哀想になった、と洩らした。
二羽のオンドリが消えて(食べられて)しまうと、群れは落ち着きを取り戻し、庭は急に静かになった。シーシーは何があったかは理解できず、ただ首をかしげている。
服部家の生き物
「ナツ」 ♀ だいぶ痩せています。ただのナツ痩せだといいのですが。
「ヤマト」 ♀ 都会の暑さにもめげず、縁側の下でお昼寝してます。
服部家のチャボたち
「サンちゃん」 ♂ キー丸がいなくなって、トツゼン王座に戻る。
「シーシー」 ♀ 若鶏たちの母さん。
「ヨモギ」 ♂ 若いオス。
「チッタ」 ♀ シーシーにそっくりな若いメス。
「ずんだ」 ♀ とても臆病な若いメス。
服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 小蕗と呼ぶ廃村と、都会の二拠点生活をしている。ナツの写真集「山旅犬のナツ」の出版の準備中。
「コユキ」 ♀ 山の学校で、子供たちと手作り流し素麺を楽しみました。
「シュウ」 ♀ いろいろ悩みながら予備校生活を送っています。
服部小雪
イラストレーター。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。インスタグラムを始めました。
yamatonatsu1109