【vol.67】にわとりのいる暮らし No.46

結婚以来、築五十年を過ぎた日本家屋に住んでいる。畳の部屋、障子、板の間、猫のひっかき傷だらけのふすま。「あまりに時代遅れ」と笑う子供たちには、うちはこういうスタイルをあえて楽しんでいるから、とあきらめてもらっている。

ひと昔前、ハロウィンで魔女に仮装して騒ぐ幼稚園生の娘に、父親の文祥は「ハロウィンは西洋の収穫祭だよ。お前には関係ない」と言った。クリスマスシーズンになれば「クリスマスって何の日か、知ってるの? お前はクリスチャンじゃないだろ?」。相手が子供であろうと、彼はストレートに本質的なことを言う。正論を言う時は、もう少し言い方に気をつけた方がいいんじゃないか、とハラハラする母(わたし)をよそに、父ちゃんがまたヘンなこと言ってからんできたゾ? という感じで子供らは気にしていなかったが。

自分の尺度で世界を見ると、そこに未知の楽しみを見つけることができる。ブレない夫のようにはなかなかなれないが、すきま風が吹く古い家に住み始めた日から、私は以前より自分が自由になったように感じている。

小学校の冬休みが始まったばかりのハットリ家が、朝から騒がしい。玄関先に、どこからかプレゼントが届いていて、子供たちは歓声を上げて走り回っている。

プレゼントが届いたのは子供らが小さい一時期のことだった。その正体が誰だったのかは、いまだに分からず、誰も触れない。サンタさんからもらったカードコレクションやゲーム機器は、今でも三兄妹の宝物である。

服部家の生き物
「ナツ」 ♀ 狩猟が大好きな犬。ブンショウの山のパートナー。
「ヤマト」 ♀ 家族の出入りをじっと見守る、性格の良い猫。
「サンちゃん(チャボ)」 ♀ 「キー丸(チャボ)」 ♀ 「シーシー(チャボ)」 ♀ 来春には次世代が誕生する計画。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 絶食と野菜・豆中心の食事がマイブーム。
「コユキ」 ♀ 夜、ヤマトが布団にやってくるのが楽しみ。

「ショウタロウ」♂ お化け屋敷アパートで卒論をがんばっているはず?!
「ゲンジロウ」♂ ニート生活5年。そろそろ焦っている!?
「シュウ」♀ 陸上部を引退し、ようやく受験生に。

服部小雪

イラストレーター。美大時代に山の魅力に出会って以来、自然に近い暮らしに憧れる。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。