【vol.61】にわとりのいる暮らし No.40

Vol61 Niwatori Main

文祥と石川竜一さんとナツが、約一ヶ月の北海道の山旅に出た。毎度のことながら、本人は携帯電話を持たない。二週間に一回の割合で官製はがきによる報告が届いた。葉書には五日分くらいの日記が書いてあり、獲物が獲れず、栗などを拾ってひもじい暮らしをしているとあったので、子どもたちは、父ちゃんたちはいいけど、ナツがかわいそう、と言った。

留守番をしている者は、旅の様子を想像しているうちに、ついつい良くないことを考えてしまうものだ。彼らが行く道南のルートに、まだ捕まっていない人喰いグマがいるらしいと小耳にはさんだので、クマに襲われている図が何度も頭に浮かんだ。幸い、クマの姿は見かけたものの、遭遇はしなかったようだ。

ついにひと月後、旅人が帰ってきた。男たちは見た目はアカだらけだけれど、余計なものが抜け落ちて、顔の中の魂が光り輝いている。静かだった家の中が、急にわいわいと活気づく。無銭旅行だったのでお土産は獲物のエゾ鹿の肉だけだが、これをかついで何十キロも歩くのはどんなに辛かったことだろう。

旅の途中、出会った方たちに何回か、「あっ、服部さんだ」と声をかけていただいたそうで、「YouTubeってすげえ」と感動していた。差し入れ(物乞い?)でもらったセブンイレブンのハムのサンドイッチが忘れられない、と彼は言った。
 それからの日々、脂肪を取り戻すべくバカ食いが始まり、文祥は「うめぇぇぇ~」を連発していた。これは竜一さんの口癖である。雨に濡れたりして不快なことも多く、どんよりしがちな旅の重たい空気を、食事をするときの竜一さんの「うめえぇぇ~」が和ませてくれたという。純粋な竜一さんは、素晴らしいパートナーだったようだ。俺も、ちゃんとうめえって言わなきゃなと言いながら、私が作る煮物にはほとんど言ってくれない(自分が作った炒め物には言う)。

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服部家の生き物
「チャボーず」 ♂×2 ♀×1 元気に一歳になりました。
「ナツ」 ♀ ゲンジロウのフトンを占領中。
「ヤマト」 ♀ 今夜は誰の布団で寝ようかな~。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 駅伝に向けて、ナイキの高い靴を購入。
「コユキ」 ♀ 大掃除のことを考えるとゆううつ。

「ショウタロウ」♂ 忙しい、お金がない。
「ゲンジロウ」♂ やることがいっぱいで時間が足りない。
「シュウ」♀ 初めてのスキー合宿へ。

服部小雪

はっとりこゆき◎イラストレーター。美大時代に山の魅力に出会って以来、自然に近い暮らしに憧れる。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。