【vol.60】酷道353号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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気になる景色がいっぱい
車窓から目が離せない酷道
新潟県柏崎市〜新潟県十日町市

国道353号は、群馬県桐生市から新潟県柏崎市を結ぶ延長約150キロの国道だ。途中、群馬・新潟の県境が不通となっている。今回ご紹介するのは、新潟県内に存在する酷道区間だ。

前夜、私は岐阜の自宅を出発し、早朝、日本海に面する新潟県柏崎市に到着した。国道353号に入り、酷道区間を目指す。酷道区間だけを走るのであれば近道することもできたが、あえて国道の終点から走ることにした。良い道も走っておくことで、酷い道がより引き立つからだ。

小岩トンネルを抜けて集落を過ぎると、山間部へ入ってゆく。“大雨時通行止めのお知らせ”という看板を見ると、いよいよという気分になる。何気なく通過しそうになったが、看板に気になる文言を発見し、車を止めて引き返した。

“連続雨量が120m、時間雨量が30㎜に達したとき、通行止めとします。”というありふれた文章の下に“道路ユーザーの方へのお願い”と書かれていた。内容としては、道路の異常を発見したら通報してね、というありふれたものだったが、道路ユーザーという表現は、これまで聞いたことがない。確かに道路ユーザーで間違いないが、道路管理者がこのような言葉を使うのが、ちょっと面白かった。

そして、ここからはじまる酷道区間。道幅は狭いが、普通車同士であれば、かろうじてすれ違うことはできるだろう。ガードレールはないが、落ちて死ぬこともない。若干の物足りなさを感じながら走っていると、市街地に入ってしまった。しかし、酷道はまだ終わりではない。

市街地を抜け、再び山間部の酷道区間がはじまる。すると、前方に何やら不思議な光景が見えてきた。赤茶色い巨大な円柱状の物体が幾つも並んでいる。石油貯蔵タンクや鉱山のシックナーのように見えたため、Uターンして確認することにした。

その正体は、砂防ダムだった。トヤ沢砂防えん堤といい、円柱の外枠が鋼材でできているため、独特な見た目をしている。円柱の中には、災害で発生した土砂が詰められているという。残土処理と砂防ダム建設の一石二鳥というわけだ。

さらに集落を過ぎると、いよいよ道幅が狭くなった。酷道が本気を出してきた矢先、目の前では、巨大な水管が圧倒的な存在感を放っていた。山の上から伸びている5本の巨大な水管が、国道の真下を通っている。これは、東京電力信濃川発電所の水力発電設備だった。

車を降りて観察したが、水管を跨ぐために国道が橋になっているのも珍しい。また、水管のそばには小屋があった。資材倉庫のように見えるが、この形はどう見ても水管だ。古くなった水管を再利用したのだと思うが、水管の巨大さを肌身で感じられる。

その後、本格的な酷道をしばらく堪能していると、県道49号とぶつかる。酷道はここで終了だ。酷道353号は、道そのものも魅力的だが、沿道に見どころの多い酷道だった。

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信濃川水力発電所の水管と、水管を利用した倉庫。水管の巨大さがよくわかる。

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道路ユーザーという見慣れない表現。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/