【vol.58】第26回 伝統保存食入門

煮豚の醤油漬け

焼豚(チャーシュー)のようだけど、醤油味が中まで染みた保存食。醤油に漬け込んであるから、保存期間は焼豚よりはるかに長い。長期間漬けたものは、そのままではちょっとしょっぱ過ぎるけれど、調理に使えば圧倒的なパワーを発揮する。

全て使い切れる料理

焼豚(チャーシュー)の嫌いな人というのは、あまりいないのではないだろうか。僕は大好きだ。でも自分で作るとなると手間がかかって、面倒くさがりの僕は、つい別のもっと簡単なものを作ってしまう。それがこの「煮豚の醤油漬け」だ。

長期間醤油に漬け込んだ肉は、当然ながらそのまま食べるにはかなりしょっぱくなる。ほぐして「肉そぼろ」にしたり、刻んでチャーハンに入れたりするといいだろう。「しっかり豚の味のついた固形の醤油」という考え方がいいかもしれない。その分だけ塩を使わなくても済む。

最初に豚を煮た汁もそのまま美味しいスープとして使えるし、漬け込んだ醤油は繰り返し使えるだけでなく豚の出汁やタマネギ、ショウガの香りがついていて、とてもいい調味料となっている。捨てずに全部使える。使った材料を全て使い切ることができるというのも、この料理のいいところだ。

しかし、このようなことを書くと、最近は「エシカルですね」などと言われてしまう。実は僕は「エコロジー」や「地球にやさしい」といった類の言葉があまり好きではない。思想的にはまったく当たり前で正しいことだし、自分でも心がけているつもりだが、あらためてこのような言葉を表に出して使うときには、必ずと言っていいほどビジネス=金儲けの匂いが濃くつきまとうからだ。

【材料】
豚肉(ヒレ肉もしくはモモ肉)600g程度、醤油100~300cc、日本酒10~30cc、みりん10~30cc、タマネギ大1個、ショウガ大1個、タカノツメ2本、たこ糸(なくても可)

【作り方】
❶最初に注意しておきたいのは、まず豚肉が入り切る最小サイズの保存容器を用意しておくということ。器が大きいと漬け込む醤油がいくらあっても足りなくなる。材料に記した醤油、日本酒、みりんの容量に幅があるのはこのため(日本酒、みりんの量は醤油の各々10分の1)。
❷ヒレ肉ならそのままでもいいけれど、モモ肉などはたこ糸でくくっておく。
❸タマネギは輪切りに、ショウガは薄切りにする。
❹鍋に水とタマネギ4分の1とショウガ4分の3を入れ、沸騰させる。沸騰したら肉を入れ、表面を煮固めたら強火のまま3分煮る。
❺そこからはとろ火で約40分から1時間ゆっくり煮る。竹串を刺してみて赤い血が出なかったら煮上がり。
❻残りのタマネギとショウガ、タカノツメを保存容器に入れ、肉が熱いうちに入れ、醤油を注ぐ。
❼注ぐ途中で使う醤油の量が分かると思うので、その量の1割ずつの日本酒とみりんを加える。
❽約半日で味がつき始めるので好みの加減で削いで食べる。
❾漬け汁は冷蔵庫の保管で繰り返しの使用が可能。

稚鮎釣りは友釣りよりも1シーズン以上早くから楽しめ、道具立てや身支度もはるかに簡単で、子供と一緒にも楽しめる。甘露煮のための調味料は、基本的に佃煮と同じものと考えてかまわない。

稚鮎の表面についているヌメリを包丁の背、もしくは粗めのスポンジでこそぎ落とす。流水でしっかり洗い流してから、水気をきちんと拭き取っておく。

稚鮎ができるだけ重ならないように大きな器で煮るのがポイント。煮ると身が柔らかくなり崩れやすくなるので、できる限り触らずに煮詰めていくのが望ましい。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。