【vol.57】にわとりのいる暮らし No.36

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チャボたちは、生まれて初めての春を迎えた。山の斜面を利用した狭い庭だけれども、季節がめぐって植物が芽生き、鶏がゆったり過ごしている風景の中には、都会の人間が失ってしまった時間が流れている。

若いオンドリは、石や切り株など、少し高いところに乗っかり雄叫びの練習を始めた。こわれたラッパのように調子っぱずれの、甲高い声である。住宅地で早朝から鳴 かれては迷惑なので、朝8時までは暗い物置小屋の中でガマンしてもらっている。

これまで飼っていたロードアイランドは、アメリカで採卵用に品種改良された種で、なんでもガツガツ食べ、丸々と太っていた。オンドリのキングは、ひと抱えして持たなければならないほど身体ががっちりしており、朝も日中もパワフルな雄叫びをあげていた。

それにくらべてチャボは脚が短く小柄だ。野生味を残しており、警戒心が強くてじっとしている時間も長い。とても身軽でぱたぱたと飛んで移動したり高いところに飛び乗ることもできる。うちの敷地を越えて遠くまで飛んで行ってしまったこともあるほどだ。オスは複雑な模様のつややかな羽毛を持ち、トサカの赤と白黒の羽毛が緑によく映える。メスは白いドバトのような姿だ。煮干しのダシガラや糠、鹿の骨を細かく砕いたもの、くず米、タンポポなどの野草の葉っぱや、腐葉土の中のムシなどを好んでつつく。

あとひと月もすれば、チャボたちはいよいよ成鶏になり、メスのシーシーは卵を産むだろう。問題はオンドリが2羽いることだ。鳴き声やオス同士の喧嘩のことも考えると、命の選別ということをしなければならないのだろうか? その心配がときどき、心の中を黒い雲のように横切る(夫は、どっちか一羽、小蕗で喰おうぜとあっけらかんと言う)。

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服部家の生き物
「ナツ」 ♀ オヤブンと一緒に、山と都会の二重生活。
「ヤマト」 ♀ ナツが山に行くとのびのび寝そべる。
「サンちゃん」 ♂ リーダー格のオス。
「キー丸」 ♂ No.2のオス。
「シーシー」 ♀ 唯一のメス。常にオンドリと一緒にいる。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 書評集『You are what you read』出ました。
「コユキ」 ♀ 夫の単身赴任先(?)の小蕗に、たまに遊びに行っています。

「ショウタロウ」♂ あれよあれよと大学3年生。
「ゲンジロウ」♂ スーパーでバイトを始めました。趣味の料理にも熱が入っています。
「シュウ」♀ アニメが大好きな高校2年生。

服部小雪

はっとりこゆき◎イラストレーター。美大時代に山の魅力に出会って以来、自然に近い暮らしに憧れる。さまざまな種類の鶏と、ヤギを飼うのが夢。夫の服部文祥と子どもたちとの暮らしを綴った『はっとりさんちの狩猟な毎日』(河出書房新社)が発売中。