【vol.39】第7回 伝統保存食入門

カキのオイル漬け

東北のカキやワカメは3.11の津波で壊滅状態になった。そして7年がたち、支援や復興という言葉も忘れ去られようとしている。
しかし、現地の産業はようやく息を吹き返したところ。「食べて応援」も始まったばかりなのだ。

わずかに残った、 大切な火を消さないように

仙台に住む妹から殻付きカキとワカメがどっさり送られてきた。友人の実家が塩竈のワカメ漁師さんらしく、やっと再興し始めて「とにかく食べてもらわなきゃ」というので、誕生日祝いに送ってくれたのだ。 

7年前、僕も石巻でアウトドアの仲間たちと一緒にボランティアを行なった。炊き出し(3、4人で1回に500人分以上の量を作っていた)のほか、漁港で打ち上げられた漁網や浮きの片付けなどもした。湾の掃除はスクリュー付きの船では水の中にあるさまざまなものが絡まってしまうので、カナディアンカヌーを使ったりした。最初は「そんな舟なんて使えねえよ」と言っていた漁師さんも、やがてその積載能力を認めてくれるようになり、帰る時には「こんなものしかあげられないけど、持って帰って、ここのこと忘れないでくれ」とガラスの浮きをくれた。それは今も家に飾ってある。

塩竈のワカメもカキも、あの7年前の津波で壊滅状態になり、ほとんどの漁師さんたちは廃業に追い込まれ、今も営業を続けているのは3、4軒ずつくらいしかないらしい。

現地に行くと更地のまま、手つかずの場所もたくさんあるけれど、今はここまで回復したことの方を素直に喜びたい。カキもワカメもとってもおいしくて、涙が出そうになった。少しずつ大事に食べたいのでオイル漬けにしたのがこれである。

【材料】カキ、コンソメ、ブラックペッパー、ハーブミックス、オリーブオイル

【作り方】
❶カキの貝殻に付着した海藻などをざっと落とす。
❷蒸し器があるなら湯を張って蒸し器にカキを入れる。蒸し器がない場合は、鍋の底2~3cmまで水を入れてカキを入れ火にかける。
❸強火にして熱し、水が沸騰して湯気が出て来たらそのまま3~5分ほど熱する。
❹蒸したカキは生のものと違って殻が開き始めているので、簡単に開けることができる。殻を開けて身を取り出す。蒸したてのカキは、これがまた絶品である。殻に溜まった汁も激ウマである。半分は蒸しガキでそのまま、半分はオイル漬けにするのがいいだろう。
❺フライパンに多めのオリーブオイルを入れ、コンソメ、ブラックペッパー、ハーブミックスを入れて熱する。
❻カキを入れ炒める。
❼煮沸したビンにカキを入れ、カキを炒めたオイルも一緒に入れる。
❽カキが完全に隠れるくらいまでオリーブオイルを足す。
❾2、3日おいて味がなじんできてから食べる。スパークリングワインや白ワインがピッタリだ。

殻付きカキというと「焼きガキ」と思う人も多いようだが、実は、焼くとせっかくの水分が飛んでしまう。僕のオススメは蒸しガキ。プルプル感がそのまま味わえる。

カキを蒸す。鍋から蒸気が上がってきても、そのままじっとしばらく(3~5分)待つ。殻から身を外す際に、熱くなった殻でヤケドをしないように注意すること。

フライパンでカキを炒める。僕はコンソメ味が好きだが、醤油味でもおいしいし、一味トウガラシを入れて辛くするのもいい。味付けは各自のお好みでかまわない。

写真・文 鈴木アキラ

1960年生まれ。料理と刃物研ぎが大好きな飲んべえアウトドアライター。「アウトドアで活躍!ナイフ・ナタ・斧の使い方(山と渓谷社刊)」ほか著書多数。