フキノトウ(フキ)

学名/Petasites japonicus
分類/キク科フキ属
分布/日本全土
別名/款冬(かんとう)、蕗の姑(ふきのしゅうとめ)
フキはキク科の日本原産の多年草。花芽や茎は山菜として日本中で愛されている山菜だ。初春に花芽が土の中から顔を出す。その芽をフキノトウと呼ぶ。山菜ではこの芽を料理する。特有な香りと苦味の強い風味で、天ぷらやフキ味噌などが人気だ。俳句でこのフキノトウは初春を表す季語にもなっている。
春一番の山菜・フキ
フキは花芽と葉を支えている葉柄を山菜として楽しめる。フキノトウは2~3月、フキは3~5月が旬だ。地域や場所によっては、葉や花をつけた茎も食べているところがある。
毎年同じ場所で摘んでもなくならないのは、育ち方に特徴があって、地中に横ばいに伸びる茎(地下茎)で成長しているからである。地上に飛び出た葉や花をいくら摘んでも、竹の節のように横へ伸びた地下茎は次々と葉や花を咲かせるのだ。ただし、株には雄と雌があり、すべての花で種ができるわけではない。これは自家受粉ができないということ。雌株の花が綿毛になり種を飛ばす。このような〝雌雄異株〟は他にもたくさんの植物で存在するが、キク科では珍しい存在だ。
フキは昔から食用とされていたため、地域で品種改良されたものも多く、野生種なども合わせるとおおよそ200種類はあるといわれている。秋田県のアキタブキや北海道のラワンブキなどは関東周辺で見るフキと桁が違うくらい大きく、葉が傘にできるほどのサイズ。高さは大きなもので2mは超え、葉は直径で1mを超えるものもある。フキノトウも関東で見るものよりひと回りは大きく、重量感がある。食べ応えがありそうだ。

花
フキには雄の花(写真左)と雌の花(写真右)が咲く。パッと見た感じではどこが違うのかわからないが、見比べるとよくわかる。雄の株の中心には蕾があり黄色っぽく見える。
葉
花の出る芽と葉の出る芽は別々で、花が先に出るとやがて葉の芽が出る。葉は大きくギザギザのある丸い葉。山でコップや皿などがない時に、代わりに葉を利用した。
根
地中で横ばいに伸びる根のようなものは実は茎。これを地下茎という。茎が土中で育ち花芽・葉芽が地上に顔を出す。根は髭根が茎の節から地中に伸びる。スギナや竹と同様だ。

雄花と雌花の違い
雄株・雌株別々に花が咲く。白い花は雌花で、やや黄色い花は雄花(花粉が黄色い)。雄花は高さ20~30cmくらいで枯れてなくなり、雌花は1mくらいの高さに育ち綿の種ができる。
フキノトウの天ぷらを作る

1.土から顔を出したばかりのあまり開いていない、大きめのフキノトウを採集。地下茎と花芽の境目でカッターナイフなどでカットする。

2.採取してきたフキノトウをボウルなどに入れて、流し水をかけながら水につける。虫やほこりなどを流す。多少のアクぬきの効果もある。

3.傷んだ葉を丁寧に確認して取り除く。ゴミなども見落とさずに取り除くこと。摘んだ時の切り口が傷んでいるので、包丁で薄く切り落とす。

4.軽くひと握りの塩をボウルなどに入れて、お湯で塩水を作る。ザルにフキノトウを入れて1時間ほど塩水に浸ける。アクがさらに抜ける。

5.1時間塩水に浸けたら水を捨てる。フキには水溶性のピロリジジンアルカロイド類という天然毒が含まれていて毒抜きにもなる。

6.塩分を取り除くため流し水で洗い流す。ここまではアク抜きのための工程。苦味などが好きな人は水に浸ける程度でもOK。

7.塩抜きをしたフキノトウはペーパータオルなどで水分を拭き取る。葉や花の隙間などに水分が残らないように注意しよう。

8.天ぷら粉1に対し水は1.4の割合でダマにならないようによく溶く。見栄えを良くするために花を上にして、裏側だけに衣液をつける。

9.180度の油で、1つずつ花を上にして揚げる。揚げ加減は色を見て判断する。きつね色よりやや薄いくらいが丁度いい。油を落として完成。

完成
フキノトウはアクが強く苦い味だが、天ぷらにするとアクも感じずに食べやすい。裏側だけを揚げて緑を残すと見栄えもいい。苦味が苦手な私でも美味しくできた。

<その他の活用法>フキ味噌
フキノトウの天ぷらと同じくらい人気のフキ味噌。フキノトウ10個に対し、塩小さじ1を入れたお湯で下茹でする。水にさらし絞って細かく切り、ごま油で炒めて、砂糖、みりん、味噌を入れて味を見ながら炒めれば完成。

日本野生生物研究所 奥山英治
テレビ番組やアウトドア雑誌、書籍を中心に、自然あそびや生きものに関する監修など多方面で活躍中。「触らないと何もわからない」をモットーに、子ども向けの自然観察会も行っている。著書に『虫と遊ぶ12か月』(デコ)、『大人も子どもも楽しい あたらしい自然あそび』(山と渓谷社)などがある。
フキのふしぎ
フキの花は雄株と雌株と別々に花が咲く。草本では珍しい雌雄異株だ。地下茎で育ち花がそこからたくさん咲くが、それが雄株であれば咲く花は全て雄。雄花は種がつかず、雌花は綿毛ができ種がつく。