私的山遊記 桂川(山梨県)ー新艇のパックラフトで早春ダウンリバーー

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猿橋〜梁川大橋/雪・雨/2024年3月


編集部の超私的な山行について気が向いた時にゆるく綴っていく「私的山遊記」の第四回。新たにパックラフトを手に入れた編集部員は、暖かい季節の到来を待ちきれず桂川へ。小雪舞う中、新艇の進水式を兼ねて川下りを行った。


 またひとつ奥の深い遊びに手を出してしてしまった。アラスカの荒野を旅するためにうまれたインフレータブル式の小型ボート、パックラフトである。陸上から自らの足ではなかなか辿り着けないフィールドにも悠々到達できるロマンに憧れを抱き、以前からチェックしていた。

 選んだのはnortikのトレックラフト。本体重量約2700gの軽量さで、足を伸ばしても余裕のある広めのシート部分を備えたシンプルなオープンデッキタイプ。比較的手頃な価格帯にもかかわらず国内の代理店からセール価格で放出されているのを見つけ、すぐに購入を決意した。ボトム生地が1000Dあり、質実剛健で知られるドイツメーカーであることも背中を押した。

 川下り当日、中央道を下りて新艇デビューのフィールドに選んだ桂川に到着。春は間近に迫り、予報では曇り、昼から雨のはずだが、河辺に下りた時には小雪が舞いはじめていた。今後の安全航行と本日の“NO沈”を願ってカップ酒で簡易的に進水式を行って出航。一度漕ぎ出せば寒さを忘れるので、沈しない限りは冬でも意外と楽しめるアクティビティかもしれない。

行きのコンビニにて調達したカップ酒で今後の川旅の無事を祈る

荷物をくくりつけ出航。上流側に車を置いたので電車賃と車のキーを忘れずに

 日本三奇橋の1つである猿橋の下を通過する。ゴルジュ状の渓谷になっていて、序盤からいきなり今回のルートのハイライト。夏にここを訪れた際に浮いている魚影を見たが、今回魚の気配はなかった。もう少し暖かくなってから船に釣竿を携行したらおもしろそう。

上に見えるのが猿橋。雪が舞っているのがわかる

友人が愛艇に選んだのは、使用歴の浅い中古の
Alpacka Raft

 水量の少ない時期なので、瀬では底を擦りながら石をプッシュしたり、うまく体重移動したりしてクリアしていく。それより浅い箇所ではポーテージを何度か。危険な人造の護岸や堰堤、人工物は少ないフィールドのため、そこまで進路に気を遣う必要はない。

1時間ほど下ったところで休憩。写真はだいたい
この構図になる……

廃屋を発見。この近くの河原に獣のアシが出ていて
ヌタ場もあった

前方の地形や流れを予測してコース取りのコツが少しずつ掴めてくる

 不安定な天候もあって解禁を迎えた渓流魚を狙う釣り人はフライフィッシャー1名のみで、釣り人を気にせず川下りができた。下畑橋を越えたあたりから渓が狭まる箇所があり、大きな岩壁や岩床が増えていくつかスリリングな小型の落ち込みが現れる。緊張感がありつつも渓谷美が感じられ、ダウンリバーの魅力が詰まったエリアだ(核心部でカメラは出せず)。

 友人は瀬尻で岩に引っかかりバランスを崩して沈。外れたシートだけをがっちり掴んで立ち上がった。浅かったので全身ずぶ濡れとはならずセーフ。自分も滑床の瀬で横向きのまま岩に押し付けられ、シート内に水が入り込んで水圧で身動きが取れなくなった。強引に船を引き剥がして脱出させる。水圧の恐ろしさを思い知ることに。

川が蛇行し、並走する甲州街道とJR中央本線から少し離れるとこの秘境感

人の手の届かないエリアに手軽にアプローチできるのが川旅の醍醐味だ

バスタブ状態でゆったり流れていったパックラフトを友人に回収してもらう。最大積載量150kgなだけあり十分な浮力を発揮

 梁川大橋をくぐったところで退渓。中央本線を使って車を回収できる。今回は2駅分、距離にして7km以上を下ったことになる。約3kgでパッキングもできて川下りできるだけの十分な性能を搭載するパックラフト。その底知れないポテンシャルを実感し、今後どんな川旅を描いていけるのか期待が膨らんだ。

 実際にnortikのトレックラフトを使用した感想としては、直進性と操作性、安定性のバランスが最適なスマートなフォルムで扱いやすい。そのため汎用性が高く、ゆったり足を伸ばせて乗り心地も快適! 前後に4箇所ずつループがついているので荷物の積載もでき、発想次第で幅広い遊び方ができそうだ。一方少し気になったのは、ベルクロ固定式のシートが設置しにくい点とポンプバッグが大きすぎて空気を入れにくい点(うまく使いこなせていないだけ?)。使ううちに試行錯誤して解決策を見つけたい。

退渓。上に梁川大橋が架かる

退渓点近くの住宅の石積みが美しかった

水気を拭き取ってパッキング

JR中央本線の梁川駅

先ほどパックラフトで通過した
桂川を梁川大橋から覗き込む

 ついでに、帰りに立ち寄った藤野やまなみ温泉をおすすめしておきたい。中央道からは少し逸れるが、一面ガラス張りで光がよく入って明るい浴室と開放的な露天風呂で川下りの冷えと疲れをよく癒せた。

 これからの週末は山だけでなく、川にも足繁く通うことになりそうだ。どうか安全に川旅を楽しめますように!