【vol.62】酷道319号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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短くてもピリリと酷い
香ばしい酷道
香川県坂出市〜愛媛県四国中央市

国道319号は四国の玄関口である香川県坂出市を起点とし、終点の愛媛県四国中央市までを結んでいる。実延長61キロほどの、比較的短い国道だ。

起点の坂出市と終点の四国中央市はいずれも瀬戸内海に面しているが、国道319号は海岸線から遠ざかるようにして山間部を通過している。短い国道で沿道に都市部も多いのだが、わざわざ遠回りして山へ突入するルートのおかげで、香ばしい酷道が存在している。

短い国道だし、しっかり堪能しようと思い、起点である坂出市からスタートした。全く酷い要素がない国道32号との重複区間を走り続け、三好市を過ぎたあたりでようやく国道319号の単独区間に入った。国道32号と分かれるといきなり“この先大型車通行困難”の看板が現れ、テンションが上がる。

集落を過ぎるとセンターラインが消え、待ちに待った酷道区間だ。ここから30キロほど、銅山川に沿って酷道が続く。国道の全長が短いのに、酷道区間はそれなりに長いから嬉しい。

対向車とすれ違うことは不可能で、車の左右に余裕もない。木々で日光が遮られ、鬱蒼としている。ガードレールは本当に危険な箇所にだけ設置されている。これぞ酷道だ。

そんな酷道を意気揚々と走っていると、前方の木々の間に、青色の案内標識が現れた。直進すれば四国中央市、左折すれば塩塚高原と書かれている。街なかではよく目にする案内標識だが、酷道に設置されていることは稀で、違和感がある。

ガードレールのない道はくねくねと曲がっているが、標高はほとんど変わらない。驚くのは、途中に集落が点在していることだ。アクセスが至極不便な場所に、集落があるのだ。特に四国においては、山の中腹よりも上に民家が点在していることも多い。完全に個人の感想だが、四国はポツンと一軒家の宝庫だと思っている。

新宮の大きな町を過ぎても、まだ酷道は続く。軽自動車でもほとんど余裕がないと思っていたが、前方からダンプカーがやって来た。なんとかやり過ごしたが、ダンプカーが通れることに衝撃を受けた。

沿道には、集落の跡も見受けられた。旅館と思しき木造の建物は原型を留めているが、それ以外は朽ちてしまっている。石積みだけになった平地を眺めながら、かつてはどれほどの世帯があって、どのような暮らしをしていたのか、妄想する。酷道にしても廃墟にしても、妄想というのはとても楽しい。

平野橋で銅山川を渡り、長大な法皇トンネルを抜けると、酷道も終了だ。普通の国道になってしまったが、四国中央市を一望できる具定展望台があったので、立ち寄ることにした。しかし、これが失敗だった。

具定展望台は恋人の聖地に認定されており、カップルだらけだったのだ。おっさん1人では、いたたまれない気持ちになった。最後の最後で、精神的な酷道が待っていた。

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酷道でダンプカーと出会うとヒヤっとする。

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沿道には集落跡も見受けられた。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/