【vol.56】酷道434号

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ドライブするだけで命に危険が迫る国道をご存知だろうか。「国道」と聞けば、生活道路よりも道幅が広く、きちんと整備されている道をイメージしがちだ。しかし、全国にはそんな常識を根底から覆す、とんでもない国道が数多く存在する。そんな危険でエキサイティングな国道のことを、我々は“酷道”と呼んでいる。

今回の酷道

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他の国道との重複だらけ
わずかな個性を見逃すな
広島県三次市〜山口県岩国市

今回ご紹介する国道434号は、山口県周南市を起点とし、中国山地を縦断して広島県三次市に至る。山間部に酷道区間が含まれているのだが、この国道、とにかく重用区間が長い。重用区間とは、他の国道と重複する区間のことだ。

道路脇に、国道標識が2つ縦に並んで設置されているのを見たことはないだろうか。棒に刺さった串団子に見えることから、道路マニアの間では“ダンゴ”と呼ばれている。ダンゴは重用区間を示す象徴的な存在である。

国道434号は、総延長が170キロほどあるのに対し、重用区間を除いた実延長は57キロ余りしかない。重用区間は113キロにおよび、全体の6割以上を占める。全部で7本の国道と重複するが、広島県内では酷道として名高い433号と重複する。

広島県三次市から山口県に向けて、国道434号のドライブをスタートする。早速、酷い道が連続するが、433号との重用区間だ。国道標識や道路案内看板には433号の表記のみで、434号は書かれていない。こういう時、国道同士のパワーバランスが可視化されたような気がする。

国道434号の酷道区間は、433号との重用区間に集中している。この区間を走っている感覚は、圧倒的に433号だ。また、酷道433号は本誌vol・40で既に紹介しているので、重用区間は割愛させていただく。

433号が南に離れ、ようやく434号の単独区間に入ったかと思うと、すかさず186号との重用区間となる。廿日市市の山中で186号と分かれ、やっと待ちに待っていた434号単独の酷道が始まる。

そして、ピークはすぐにやって来る。分岐からわずか1分ほどで、松の木峠に到着する。あまりにも展開が早い。この松の木峠は、国道434号で標高が最も高い。最高地点776mを示す看板と、ずっと見たかった434号の国道標識が立っていた。

峠を過ぎるとさらに道幅が狭くなり、本格的な酷道が始まった。始まった直後に“通行止”の看板が現れ、終了したと思った。ここで通行止というのは、せっかくの酷道が走れないばかりか、この先の行程に大きな影響をもたらす。しかし、近づいて看板をよく見ると、通行止の右側に手書きで小さく“路肩崩壊のため4t車以上”と書かれていた。普通車は通ることができるのでホッとしたが、これは本当に心臓に悪い。

4t車以上通行止の原因である路肩崩壊現場を通過すると、少し先で2車線の快走路となり、その後も快適な道が続く。

国道434号が単独で酷道となるのは、ほんの数キロほどしかない。他の道と重なり合うばかりの国道が、一瞬だけ見せる個性。その瞬間を見逃さないよう、じっくりと噛みしめるように走る。長く続く酷道とは異なり、希少価値があるように感じるから不思議なものだ。

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この国道の最高地点を示す松の木峠の看板。亀の絵がなんともいえない。

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この国道の最高地点を示す松の木峠の看板。亀の絵がなんともいえない。

鹿取茂雄

酷い道や廃れた場所に魅力を感じ、週末になると全国の酷道や廃墟を旅している。2000年にWEBサイト「TEAM 酷道」をスタート。新著『酷道大百科』(実業之日本社)発売中!
http://teamkokudo.org/