【vol.48】にわとりのいる暮らし No.27

F48 Niwatiri Main

服部文祥と犬のナツが北海道縦断の旅に発った。文祥が帰って来るまで、この連載を任せていただくことになった。

日常生活ではもちろん、長い旅に出るときも文祥は携帯電話を持たない。最悪の何かがあっても、その時はその時で仕方がない、とお互いに腹をくくっている。あきらめることに慣れてしまった私の横で、シュウが「3ヶ月は長いでしょ。途中で連絡できないの」と父親をまっすぐに見つめて聞く。「えーっとね、ハガキを一枚持ったよ」「ハガキ!?」と娘はあきれている。

旅が始まる前、バタバタと忙しそうな父親を捕まえてシュウが般若心経を唱える。我が家では般若心経を唱えるとその月のお小遣いをもらえることになっている。小学生時代は学年×一〇〇円、中学生以降は一〇〇〇円から始まって学年が上がるごとに五〇〇円アップ。中学生にとって父親の留守とは現金の支給が断たれることを意味するようだ。

いよいよ文祥と犬のナツがいなくなると、猫のヤマトが入れ替わりに家に入ってくる。そして家族の足元にシッポを巻きつけながら高い声で鳴いて甘える。ナツがいない今、この家における自分の地位が上がっていることをよく分かっている気がする。

見送って早々に庭先では問題が起きた。キングが段差から落ちて左脚に怪我をしたらしく、倉庫の中にうずくまって元気がない。もしや死んでしまうのかと暗くなったが、三日後にはなんとか右脚のケンケンで移動するようになった。生き物の老いは、多くの場合脚からやって来るので、キングもかなり弱ってきていることは確かである。

F48 Niwatiri 1
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服部家の鶏
「キング」 ♂ トシを感じる今日この頃です。
「チビ」 ♀ 人間嫌いのお局様。

「プープ」 ♀ 飼い主に噛み付く問題児。

服部家の人々
「ブンショウ」 ♂ 犬と一緒に北海道縦断旅行中です。
「コユキ」 ♀ ブンショウ居ぬ間のトマト料理は最高。

「ショウタロウ」♂ 居酒屋でバイト、焼き鳥焼いています。
「ゲンジロウ」♂ 青春は明るいなんて嘘、心身不調が苦しい。
「シュウ」♀ 駅伝シーズン到来、神奈川代表目指して走る予定。

「ナツ」♀ 親分とシカを追っかけて日々奮闘中です。
「ヤマト」♀ 私の天下がやってきました。